職務著作とは? 会社・チームで作った作品の著作権は誰のもの
仕事やチームで作った作品の著作者は、一定の場合に会社などの法人になると整理されています(職務著作)。要件の考え方、フリーランス・同人サークルとの違い、契約で決めておきたい点を、クリエイター目線で大阪・堺の行政書士が解説します。
「これ、描いたのは自分なのに」——チーム制作でいちばん揉めるところ
ゲーム会社に勤めながらイラストを描いている。会社の企画でキャラクターをデザインした。数年後、そのキャラを個人の同人誌やグッズに使いたくなった——。あるいは、サークルで作ったボードゲームを、あとから一人のメンバーが別の場所で流用していた。
こうした場面でよく出てくるのが、「作った人=著作者」なのかという問いです。著作権は原則として実際に創作した人(著作者)に生じると整理されていますが、一定の場合には、会社などの法人等が著作者になるという考え方があります。これが職務著作(法人著作)です。
※この記事は一般的な情報の整理です。実際の可否や結論はケースによって変わります。迷うときは、後述の窓口からご相談ください。
1. 職務著作とは
職務著作とは、ごく大まかにいうと、会社などの組織の中で、業務として作られた作品について、著作者を個人ではなくその法人等とする仕組みだと整理されています。
著作権法では、おおよそ次のような要素がそろった場合に、法人等が著作者になるとされています。
- 法人等の発意にもとづくこと(組織側の企画・指示がきっかけになっている)
- その法人等の業務に従事する者が、職務上作成したものであること
- 法人等の名義で公表されるものであること(プログラムの著作物については、この公表名義の点が別に扱われるとされています)
- 作成時の契約や勤務規則などに別段の定めがないこと
逆に言えば、これらのどれかを欠く場合には、職務著作にはならないと整理されている、ということです。「会社の仕事で作ったから、当然に会社のもの」と一律に決まるわけではない点が、実務上とても重要になります。
2. 著作者が法人になると、何が変わるのか
著作者が誰かは、単なる名義の問題ではありません。著作者になるということは、財産的な権利(著作権)だけでなく、著作者人格権も、その法人等に生じると整理されているためです。
| 比べる点 | 個人が著作者の場合 | 職務著作にあたる場合 |
|---|---|---|
| 著作者 | 実際に創作した個人 | 法人等(会社・団体など) |
| 著作者人格権 | 創作した個人に生じる | 法人等に生じるとされる |
| 保護期間の起算 | 著作者の死亡を基準に考える | 公表の時を基準に考えるとされる |
「自分が描いたイラストなのに、名前を出すかどうかを自分で決められない」といった感覚のズレは、ここから生まれます。クレジット表示をどうするかは、あらかじめ取り決めておくのが穏当です(→クレジット表示と氏名表示権)。
なお、保護期間の年数など具体的な数値は制度改正で変わり得ます。最新の内容は文化庁など所管省庁の公式情報をご確認ください。
3. フリーランス・外注・同人サークルでは成り立ちにくい
ここが、クリエイターにとっていちばん誤解の多いところです。職務著作は「業務に従事する者」という関係を前提にした仕組みだと整理されています。そのため——
- 業務委託でイラストを外注した:受注した側は「業務に従事する者」にあたらないと考えられる場面が多く、職務著作にならないことが一般的だとされています。
- 同人サークル・有志チーム:雇用関係のない集まりでは、職務著作の枠組みにはなじみにくいと整理されています。
つまり、お金を払って作ってもらったからといって、当然に発注側が著作者・著作権者になるわけではないということです。発注側が権利をまとめて持ちたいのであれば、契約で権利の扱いを取り決めておく必要があります(→クリエイター契約書の基本)。
また、複数人が分けられない形で共同創作した場合は、職務著作ではなく共同著作物の問題になり得ます(→共同著作物のきほん)。
4. こんな場面で迷いやすい
会社員が、業務外で描いたもの
勤務先の仕事とは無関係に、自分の時間で描いたイラストや作った同人作品は、職務著作の要件を満たさない場面が多いと考えられます。ただし、勤務規則や就業規則、雇用契約に副業・成果物についての定めがあることも珍しくありません。会社との関係では、契約・規則の中身が優先して問題になります。まずは手元の規程を確認しておくと安心です。
ゲーム・アプリの開発チーム
プログラムの著作物については、公表名義の点が他の著作物と別に扱われるとされており、社内開発では職務著作が成立しやすい面があります。一方で、社外の協力者・業務委託メンバーが混ざっている場合は扱いが変わり得ます。誰がどの部分を作ったのかを記録しておくことが、後々の整理に効いてきます。
ボードゲームをチームで作った
ルールの骨組み、イラスト、カードテキスト、パッケージデザイン——役割が分かれる制作では、パーツごとに著作者が違うことがあります。なお、ゲームのアイデアやルールそのものの扱いには別の論点があります(→ゲームのルール・アイデアは守られる?)。
5. 制作前に確認しておきたい5つ
- 関係を確認する:雇用なのか、業務委託なのか、有志の集まりなのか。
- 誰が何を作ったかを記録する:担当範囲をメモやチャットログで残しておく。
- 権利の帰属を書面にする:職務著作にあたらない前提なら、契約で明記しておく。
- クレジット表示のルールを決める:名前を出すか、どう表記するか。
- あとの利用範囲まで決める:ポートフォリオ掲載、続編、グッズ展開などの可否。
ここに挙げた以外にも、二次利用や第三者への再許諾など詰めておきたい点はあります。具体的な内容は、事案にそってご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 会社の業務で描いたイラストを、個人のポートフォリオに載せてもいいですか?
A. 職務著作にあたる場合、著作者は法人等になると整理されているため、掲載の可否は勤務先の判断や社内規程によることになります。制作前に「実績として掲載してよいか」を確認し、可能なら書面で残しておくと安心です。
Q. 業務委託でイラストを発注しました。著作権はこちらのものですか?
A. 発注しただけで当然に発注側のものになるとは限りません。委託先は「業務に従事する者」にあたらない場面が多いとされ、職務著作にならないことが一般的だと整理されています。権利の扱いは契約で取り決めるのが確実です。
Q. サークルで作った作品は、代表者のものになりますか?
A. 雇用関係のないサークルでは職務著作の枠組みにはなじみにくいとされ、実際に創作した人が著作者になると考えられます。複数人で分けられない形で創作した場合は共同著作物の問題になり得ます。
Q. 退職したら、在職中に作った作品はどうなりますか?
A. 職務著作にあたるものは、退職によって著作者が個人に移るわけではないと整理されています。退職後に使いたい素材がある場合は、在職中に扱いを確認しておくことをおすすめします。
この記事は一般的な情報です
本記事は職務著作に関する一般的な情報提供であり、結論はケースによって異なります。すでに争いになっている場面の交渉・訴訟対応は弁護士の領域です。当事務所は、契約書・合意書といった書類の作成と、その前段のご相談の範囲でお手伝いします。