共同著作物とは? 複数人で作った作品の権利はどうなるか
複数人で作った作品は、寄与を分離して使えない場合に「共同著作物」になると整理されています。権利は共有となり、利用には原則として全員の合意が必要です。サークル・チーム制作で迷いやすい点を、大阪・堺の行政書士がクリエイター目線で解説します。
「みんなで作った作品」を、あとから一人で使えるか
ボードゲームを3人で作った。ゲームを有志チームで完成させた。合作イラストを2人で描いた——。楽しく作っている間はいいのですが、あとから問題になりやすいのが「この作品、誰が何をどこまで決められるのか」という問題です。
再販したい。別のイベントで頒布したい。企業からオファーが来た。メンバーの一人と連絡が取れなくなった。そんなとき、権利のかたちを知らないまま進めると、動けなくなってしまうことがあります。
複数人で作った作品には、著作権の世界で共同著作物という考え方が用意されています。まずはこの仕組みを押さえておきましょう。
※この記事は一般的な情報の整理です。実際の可否や結論はケースによって変わります。迷うときは、後述の窓口からご相談ください。
1. 共同著作物とは
共同著作物とは、おおよそ2人以上が共同して創作した作品で、それぞれの寄与を分離して個別に利用することができないものだと整理されています。ポイントは2つです。
- 共同して創作したこと(それぞれが創作的な表現に関わっている)
- 寄与を切り分けて別々には使えないこと
たとえば、2人で1枚の絵を描き込み合って完成させた場合、「どこからどこまでがAさんの絵」と分けて取り出すことはできません。こうしたものが共同著作物にあたりやすいと考えられます。
2. 「分けて使えるもの」は共同著作物ではない
一方で、複数人が関わっていてもそれぞれの部分を独立して使える場合は、共同著作物ではなく、別々の著作物が組み合わさったものとして整理されることがあります(結合著作物と呼ばれることがあります)。
| 共同著作物になりやすい例 | 分けて考えられやすい例 | |
|---|---|---|
| 作品のかたち | 2人で描き込み合った1枚のイラスト/分担せず一緒に練り上げた文章 | 歌詞と楽曲/絵本の絵と文/ゲーム内の個別のイラストとBGM |
| 切り分け | 寄与を取り出して別々には使えない | それぞれ単独でも利用できる |
ボードゲームやゲーム作品は、両方が混ざるのが実情です。カードイラストは個別に使えるが、ルールブックの文章は3人で書き合ったので分けられない——といった具合です。作品全体をひとまとめに考えず、パーツごとに整理すると見通しがよくなります。
3. 共同著作物の権利は「共有」になる
共同著作物の著作権は、著作者全員の共有になると整理されています。そして共有になると、次のような制約が生じるとされています。
- 著作権の行使には、原則として共有者全員の合意が必要とされています。つまり、一人の判断だけで頒布・許諾・譲渡を決めることは想定されていません。
- 持分の譲渡なども、他の共有者の同意が関わるとされています。
- 著作者人格権も、全員の合意によって行使するものと整理されています。改変や公表、氏名表示の扱いも同様です。
ただし、共有者は正当な理由がないのに合意の成立を妨げてはならないという趣旨の定めもあるとされています。とはいえ、実際に「正当な理由があるか」を争う場面は、当事者だけで解決するのが難しくなりがちです。
また、保護期間は最後に亡くなった著作者を基準に考えると整理されています。年数などの具体的な数値は制度改正で変わり得るため、最新の内容は文化庁など所管省庁の公式情報をご確認ください。
4. 「手伝った人」は共同著作者になるのか
ここは制作現場で最も揉めやすい部分です。共同著作者になるかどうかは、創作的な表現に関わったかという観点で考えられると整理されています。
- アイデアを出しただけ/テーマを提案しただけ:表現そのものに関わっていない場合、共同著作者にあたらないと考えられる場面があります。
- 指示・注文をしただけ:発注や監修にとどまる場合も同様に整理されることがあります。
- 資金を出した/場所を貸した:創作への寄与とは別の話として扱われるのが一般的だと考えられます。
とはいえ、実際の制作は「アイデア出しと執筆が混ざっている」ことがほとんどで、線引きは個別性の高い判断になります。あとから思い出で議論しないためにも、制作中に役割を記録しておくことが有効です。
なお、ゲームのルールやアイデアそのものの扱いには別の論点があります(→ゲームのルール・アイデアは守られる?)。また、雇用関係のある組織での制作では職務著作の問題になり得ます(→職務著作のきほん)。
5. チーム制作を始める前の5つ
- 誰が何を作るか、役割を書き出す:担当範囲を最初に決めて共有しておく。
- 権利のかたちを決めておく:共有にするのか、誰かに集約するのか。
- 利用の決め方を決めておく:再販・委託販売・企業からのオファーへの返事を、誰がどう判断するか。
- 抜けたときのルールを決めておく:メンバーが離脱・連絡不通になった場合の扱い。
- クレジット表記を統一する:サークル名か個人名か、どう並べるか。
ここに挙げた以外にも、続編・派生作品や収益の配分など、決めておくと安心な項目があります。どこまで書面にするかは規模によりますので、具体的な内容はご相談ください(→クリエイター契約書の基本)。
よくある質問(FAQ)
Q. サークルで作ったゲームを、自分だけの判断で再販してもいいですか?
A. 共同著作物にあたる場合、著作権の行使には原則として共有者全員の合意が必要と整理されています。単独での判断は避け、メンバーに確認するのが穏当です。
Q. メンバーの一人と連絡が取れません。作品を動かせませんか?
A. 共有である以上、原則として合意が前提になるため、実務上は動きにくくなります。連絡先や合意の取り方をあらかじめ決めておくことが予防になります。すでに争いになっている場合は弁護士へのご相談をご検討ください。
Q. 「アイデアは自分が出した」と主張されました。共同著作者ですか?
A. 共同著作者かどうかは創作的な表現への関与で考えられると整理されており、アイデアの提供のみでは該当しないと考えられる場面があります。ただし個別性が高く、制作経緯の記録が判断材料になります。
Q. 歌詞と曲を別々の人が作った場合も共同著作物ですか?
A. 歌詞と楽曲はそれぞれ独立して利用できるため、別々の著作物として整理されるのが一般的だとされています。分けて使えるかどうかが目安になります。
この記事は一般的な情報です
本記事は共同著作物に関する一般的な情報提供であり、結論はケースによって異なります。すでに争いになっている場面の交渉・訴訟対応は弁護士の領域です。当事務所は、制作前の取り決めを形にする合意書・契約書などの書類作成と、その前段のご相談の範囲でお手伝いします。