阪竹行政書士事務所
著作権

ボードゲーム頒布前の権利チェック イラスト・BGM・書体・外注の棚卸し

公開 2026.07.31 著者: 阪口智紀(行政書士)

ボードゲームの頒布前に確認したい権利を、イラスト・BGM・書体(フォント)・外注や共同制作といった要素ごとに棚卸しします。誰が何の権利を持つのかを制作段階で整理する考え方を、大阪・堺の行政書士がクリエイター目線で解説します。

1つの箱には、いろんな人の権利が入っている

ボードゲームは、1人だけで完結することが少ない制作物です。イラストは絵師さんに頼み、ロゴは別の人が組み、デジタル版のBGMはフリー素材を探し、ルールブックの本文には配布フォントを使う——気づけば、1つの箱の中に複数の人の権利が同居している状態になっています。

頒布(イベントでの配布・販売、通販、データ配信など)の段階になってから「これ、使ってよかったんだっけ」と慌てないために、制作の早い段階で要素ごとに権利を棚卸ししておくのが実務的です。この記事では、その棚卸しの視点を整理します。

※ゲームのルール・システムそのものが著作権で守られるかという論点は、別記事で扱っています(→ボードゲームの「ルール・システム」は著作権で守れる?)。本記事は「頒布までに関わる権利の棚卸し」に絞ります。

1. まず「要素ごとに誰が作ったか」を書き出す

難しい法律論に入る前に、紙一枚で構いませんので、ゲームを構成する要素を並べて、それぞれの作り手と入手経路を書き出すことをおすすめします。ここが曖昧なまま進むと、後から確認するのが一番大変になります。

要素書き出しておきたいこと
イラスト・カードの絵誰が描いたか/依頼か自作か/取り決めの有無
ロゴ・パッケージデザイン制作者/使用範囲の取り決め
BGM・効果音(デジタル版・PV)入手元/利用条件の記載場所
書体(フォント)フォント名/ライセンスの種類
ルールブックの文章・世界観執筆者/参考にした資料の有無

この表が埋まらない箇所は、そこが確認すべきポイントだと考えると分かりやすくなります。

2. イラスト・外注 ——「支払った=権利をもらった」とは限らない

制作でいちばん論点になりやすいのが、外部のイラストレーターやデザイナーへの依頼です。ここで押さえておきたいのは、報酬を支払ったことと、著作権が自分に移ることは、自動的にはつながらないと整理されている点です。

一般に、作品を創作した人に著作権が生じるとされ、依頼して作ってもらった場合でも、権利の扱いは当事者の取り決め次第になる場面が多いと考えられています。だからこそ、依頼時に次のような点をあらかじめ書面で決めておくと、あとで揉めにくくなります。

これらを整理した書面づくりは、クリエイター契約書の基本もあわせてご覧ください。

3. 共同制作 —— 「みんなで作った」を後から分けるのは難しい

サークルや友人同士で作る場合、役割が混ざったまま完成してしまうことがよくあります。「誰がどこを作ったか分けられない」状態になると、権利関係も共有的な扱いになり得るとされ、その後の判断(再版する・別のイベントに出す・デジタル版を出す・解散する)で全員の足並みが必要になる場面が出てきます。

楽しく作っているうちは問題になりませんが、あとで進路が分かれたときにこそ効いてくるのがこの部分です。制作開始時に「再版はどう決めるか」「メンバーが抜けたらどうするか」を一言でも決めて残しておくと、将来の自分たちを助けます。

4. BGM・効果音 —— 「フリー」の中身を読む

デジタル版やPV、会場で流す音源を用意するとき、いわゆるフリー素材を使う方は多いと思います。ここで大切なのは、「フリー」という言葉が指す範囲は配布元ごとに違うという点です。無料であっても、商用利用・改変・再配布などの条件が付されていることがあります。

音楽は権利が重なりやすい分野でもあります(作詞・作曲の側と、録音・実演の側など)。詳しくは動画・配信・ゲームで音楽を使いたいを参照してください。素材全般の考え方はフリー素材・商用利用の落とし穴にまとめています。

5. 書体(フォント)—— 見落とされやすい要素

ルールブックやカードの文字組みで使う書体(フォント)は、棚卸しから抜け落ちやすい要素です。フォントは、多くの場合利用条件(ライセンス)を定めた上で提供されており、その条件の中に、印刷物への使用・商用頒布・埋め込み・ロゴ化などの扱いが書かれていることがあります。

「パソコンに入っていたから自由に使える」と考えず、使ったフォント名と、その配布元の利用条件を控えておくのが安全です。とくに、ゲームタイトルのロゴとして文字を加工して使う場面は、条件を確認しておきたいところです。

6. 頒布前に見直したい5点

よくある質問(FAQ)

Q. イラストを外注して支払いも済ませました。著作権は自分のものですか?

A. 支払いと権利の移転は自動的にはつながらないと整理されています。譲り受けるのか、使わせてもらう形にするのかは取り決め次第です。書面で残しておくことをおすすめします。

Q. フリー素材のBGMなら、頒布するゲームに入れて大丈夫ですか?

A. 配布元ごとに条件が異なります。商用利用や再配布にあたる扱いが認められているかを、配布元の記載でご確認ください。

Q. サークルで共同制作しました。1人で再版してもいいですか?

A. 分担が混ざっている場合、判断に他のメンバーが関わる場面があり得ます。制作開始時か、遅くとも頒布前に決め方を共有しておくと安心です。

Q. ゲームタイトルを他の人に使われたくありません。

A. 名称・ブランドの保護は商標の領域に関わります。登録出願の代理や登録可能性の判断は弁理士(または弁護士)の専門領域です。当事務所は、何を守りたいかの整理や書面づくりの範囲でご相談に対応します。

この記事は一般的な情報です

本記事は制作物にまつわる権利の整理についての一般的な情報提供であり、結論は個別の事情によって異なります。商標・意匠・特許などの出願手続きの代理や登録可能性の判断は弁理士(または弁護士)、具体的な紛争・交渉・裁判は弁護士の領域です。当事務所は、権利関係を整理する契約書・合意書などの書類作成と相談対応の範囲でお手伝いし、必要に応じて各専門家と連携します。

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