自分の作品が無断で使われていたら ― まず何を確認するか
自分のイラストやゲーム素材が、見覚えのないアカウントやグッズに使われていた——。動揺したまま動くと、かえって不利になることがあります。まず何を確認し、何を残しておくとよいのか。そして「どこからが弁護士の領域なのか」を、大阪・堺の行政書士がクリエイター目線で整理します。
その瞬間に、いちばんやってはいけないこと
物販ブースに並んだアクリルスタンドの絵柄が、どう見ても自分の描いたものだった。フリマアプリに自作のゲーム素材が「自作データ」として出品されていた。SNSでバズっている画像が、自分のポートフォリオからの切り抜きだった。
こうした場面で、多くの人が最初にすることはスクリーンショットを撮る前に相手へリプライを送ることです。しかし、これはあまりおすすめできません。指摘を受けた相手が投稿や出品をすぐ削除してしまうと、「そこに何があったか」を示す手がかりごと消えてしまうことがあるためです。
感情としてはまったく自然な反応ですが、順番としては「記録する → 事実を確かめる → どう動くかを決める」が落ち着いた進め方だと整理されています。
※この記事は一般的な情報の整理です。実際の結論はケースによって変わります。判断に迷うときは、後述のとおり専門家へご相談ください。
1. まず「今ある状態」を記録する
いちばん急ぐべきなのは、相手に伝えることではなく、現状を残すことです。ウェブ上の情報は数分で消えます。記録は後から作れません。
残しておくと役に立つとされるのは、次のようなものです。
- ページ全体が写ったスクリーンショット:URL・アカウント名・投稿日時・本文が同じ画面に入るように撮ります。画像だけを切り抜くと、どこにあったのかが分からなくなります。
- URLそのもの:テキストとして控えます。短縮URLではなく、元のアドレスが望ましいとされています。
- 確認した日時:自分がいつ見つけたのかをメモしておきます。
- 販売・頒布を伴う場合はその情報:価格帯、在庫表示、レビュー数、イベント名やブース位置など、規模感が分かるもの。
あわせて、自分の側の記録も揃えておくと後が楽です。作品の制作日が分かるファイル(レイヤーが残った作業データ、下描き、作業配信のアーカイブ、初出の投稿日時など)は、「自分が先に作った」ことを示す手がかりになり得ます。日頃から原本を残しておく習慣そのものが、いざというときの備えになります。
2. 「自分にどの権利があるか」を確認する
次に確認したいのが、その作品について、今の自分がどんな立場にあるかです。ここが曖昧なまま動くと、話がこじれやすくなります。
- 過去に譲渡していないか:企業案件やコンペで、著作権を相手に譲る取り決めをしていたケースがあります(→コンペ・公募に応募するときの権利)。譲渡していれば、権利者はもう自分ではないことになります。
- 共同で作った作品ではないか:ゲームやボードゲームのように複数人で作ったものは、権利の扱いが単独制作と異なる場面があります。
- 著作者人格権に関わる面もあるか:名前を消される、改変される、といった扱いは、財産的な権利とは別の観点から問題になり得ると整理されています(→クレジット表示と氏名表示の権利)。
3. 「本当に無断か」を落ち着いて確かめる
見落とされがちですが、無断利用に見えて、実はそうでないことがあります。動き出す前に、次の可能性を一度つぶしておくと安全です。
- 自分が過去に許諾していた:DMでのやり取りやコンペ規約に、利用を認める記載が含まれていることがあります。
- 素材配布サイト経由だった:自分が素材として公開したもの、あるいは他人が勝手に素材サイトへ流したものが出所である場合があります(→フリー素材の「商用利用可」の落とし穴)。
- 引用など、法律上認められる利用にあたる可能性:出所を示した紹介・批評のような使い方は、要件を満たせば認められる場面があるとされています(→「引用」と「転載」はどう違う?)。
- 似ているだけの別作品である可能性:構図やモチーフが近くても、独立して作られたものであれば評価が変わり得ます。
「明らかに自分の線だ」と感じても、第三者に説明できる形で理由を言語化できるかを一度確かめておくと、その後の話が進めやすくなります。
4. 動く前に確認したい5つのこと
ここまでを、確認の順にまとめます。
- ①記録は取ったか:URL・日時・画面全体のスクリーンショットが揃っているか。
- ②自分は今も権利者か:譲渡・共同制作の有無を確認したか。
- ③許諾していないと言い切れるか:過去のやり取りや規約を読み返したか。
- ④どこまで広がっているか:1件だけか、転載が連鎖しているか、販売を伴うか。
- ⑤自分はどうしたいのか:止めたいのか、クレジットを入れてほしいのか、正式に許諾したいのか。
特に⑤は見落とされがちですが、いちばん大事な軸です。目的が定まっていないまま相手に連絡すると、着地点のないやり取りになりかねません。
5. ここからは弁護士の領域です(業際について)
ここは誤解が多いところなので、はっきり書きます。
相手方に削除を求めること、損害賠償を請求すること、相手と交渉すること、訴訟を起こすこと——これらはいずれも弁護士の領域であり、行政書士が代理して行うことはできません。「行政書士に頼めば代わりに掛け合ってもらえる」というものではない、という点はぜひ知っておいてください。
その上で、行政書士がお手伝いできるのは次の範囲です。
| 行政書士ができること | 弁護士の領域(当事務所では行いません) |
|---|---|
|
・事実関係の聞き取りと整理 ・証拠をどう保全しておくとよいかの一般的な助言 ・内容証明郵便の文案作成 ・今後に向けた契約書・利用許諾書の作成 ・弁護士など他の専門家へのおつなぎ |
・相手方への削除請求 ・損害賠償の請求 ・相手方との交渉・示談の代理 ・発信者情報の開示請求や訴訟の手続き |
内容証明郵便についても、あくまで書面の文案を作成するところまでです。そこから先、相手方とやり取りをする代理人になることはできません。争いになりそうな見通しがある場合は、はじめから弁護士へご相談いただくのが確実です。
また、各プラットフォームには規約に基づく申告の窓口が設けられていることがありますが、その手続きはご本人か、代理できる立場の専門家が行うものとされています。
よくある質問(FAQ)
Q. 相手にDMで「消してください」と伝えてもいいですか?
A. ご本人の判断で連絡すること自体は可能です。ただし、記録を取る前に伝えると証拠が消えることがあります。また、やり取りの内容が後の判断に影響する場面もあるため、規模が大きい場合や販売を伴う場合は、連絡の前に弁護士へ相談されることをおすすめします。
Q. 著作権を登録していないと主張できませんか?
A. 著作権は創作した時点で発生すると整理されており、登録は権利発生の条件ではないとされています。登録制度は別の目的で用意されているものです(→著作権は登録が必要?)。
Q. お金を払ってもらえれば構わない場合はどうすれば?
A. 事後的に利用を認める形にするなら、条件を書面で整理しておくと後々の食い違いを防げます。利用許諾の書面作成は行政書士がお手伝いできる範囲です。ただし、金銭の請求そのものや相手との交渉は弁護士の領域です。
Q. 海外のアカウントが相手でも同じですか?
A. 相手の所在地やサービスの所在によって、取り得る手段や適用される考え方が変わり得ます。個別性が高い領域のため、早い段階で弁護士にご相談ください。
この記事は一般的な情報です
本記事は、無断利用を見つけたときの一般的な考え方の整理であり、個別の事案についての結論や法的助言ではありません。削除請求・損害賠償請求・交渉・訴訟は弁護士の領域です。当事務所では、事実関係の整理、証拠保全に関する一般的な助言、内容証明郵便の文案作成、そして今後の契約書づくりの範囲でお手伝いし、必要に応じて弁護士へおつなぎします。