著作権の「譲渡」と「利用許諾」はどう違う? 契約の基礎
「著作権はこちらに帰属します」と書かれた依頼書と、「使わせてください」というお願い。この2つは似て見えて、中身がまったく違うものだと整理されています。譲渡と利用許諾(ライセンス)の違いを、イラスト・デザイン・ゲーム制作・同人の現場で迷う場面から、大阪・堺の行政書士がやさしく整理します。
「渡す」のか、「貸す」のか
イラストを1枚納品する。ゲームのキャラクターデザインを引き受ける。ボードゲームのパッケージ絵を描く。そんなとき、依頼書やメールにこんな一文が入っていることがあります。
「納品物の著作権は、当社に帰属するものとします」
一方で、別の案件ではこう書かれています。
「本イラストを、当社の商品パッケージに使用することを許諾いただきます」
前者が譲渡、後者が利用許諾(ライセンス)のイメージです。日常の感覚に置き換えると、譲渡は持ち物そのものを手放すこと、利用許諾は自分の持ち物のまま、決めた範囲で使ってもらうことに近いと言えます。同じ「作品を使ってもらう」でも、あとに残るものがまるで違ってきます。
※この記事は一般的な情報の整理です。実際の結論は契約書の文言や事情によって変わります。迷うときは、後述の窓口からご相談ください。
1. 譲渡と利用許諾のちがい
まず、大づかみの比較です。
| 譲渡 | 利用許諾(ライセンス) | |
|---|---|---|
| 権利の行き先 | 著作権(財産権)そのものが相手に移ると整理されています | 権利は自分に残ったまま、「使ってよい」という約束が生まれると整理されています |
| あとで自分が使えるか | 自分の作品でも、使い方に制限が生じ得ます | 原則として自分でも使えます(独占的な許諾では制限が生じ得ます) |
| 他の人にも使わせられるか | 相手の判断になっていきます | 非独占なら、別の相手にも許諾できるのが一般的です |
| 向いている場面 | 相手が長く自由に展開したい(商品化・シリーズ化など) | 用途・期間を区切って使ってもらいたい |
どちらが良い・悪いという話ではありません。相手の使い方に見合っているか、そして自分がその後どうしたいかで選ぶものだ、と考えると整理しやすくなります。
「譲渡」でも作者の名前が消えるわけではない
著作権を譲渡しても、著作者人格権と呼ばれる権利は作者の手元に残ると整理されています(詳しくは→著作者人格権とは ― 譲渡できない権利の基礎)。ただし契約書には「著作者人格権を行使しない」という条項(不行使特約)が置かれることも多く、実際の運用はその文言に左右されます。
2. 見落としやすい「27条・28条」の話
ここが、譲渡の契約でとくに知っておきたい論点です。著作権法には、譲渡契約で翻案権等(27条)と二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(28条)を特掲(=はっきり書き出すこと)していない場合、それらの権利は譲渡した人に留保されたものと推定されるという趣旨の規定が置かれています。
言い換えると、契約書に「著作権を譲渡する」とだけ書いてあった場合、キャラクターを描き足す・色を変える・アニメにする・翻訳するといった「作り変える系」の権利までは移っていないと扱われる可能性がある、ということです。
そのため実務では、こうした書き方が使われることがあります。
「著作権(著作権法第27条および第28条に規定する権利を含む)を譲渡する」
この一文があるかどうかで、契約の意味は大きく変わり得ます。作者側は「そこまで渡すつもりだったか」を確認したい場面ですし、依頼側は「後で改変・展開したいのに渡っていなかった」という食い違いを避けたい場面です。どちらの立場でも、目を止める価値のある箇所だと言えます。
なお、これは推定の規定と整理されており、事情によって結論が変わり得ます。契約の解釈をめぐって争いになった場合の対応は弁護士の領域です。
3. 利用許諾を選ぶなら、決めておきたい5つ
「譲渡までは避けたいが、使ってもらいたい」というときは、利用許諾で範囲を区切ります。とくに、次のあたりを決めておくと後の食い違いが減るとされています。
- 用途・媒体:Webのみか、印刷物・グッズ・パッケージまで含むか
- 期間:期限を設けるか、設けないか
- 地域:国内のみか、海外展開も含むか
- 独占か非独占か:他の相手にも許諾してよいか
- 改変の可否:トリミング・加筆・色調整をどこまで認めるか
このうち改変の可否は、クリエイターにとって気持ちの面でも大きい部分です。「勝手に描き足された」というトラブルは、ここが曖昧なまま進んだときに起きやすいと言われます。
4. イベント・コンペの現場では
ボードゲームや同人のイベント、企業のコンペ・公募では、応募規約に権利の扱いがまとめて書かれていることがあります。応募した時点で規約に同意した扱いになるのが一般的なので、出す前に読むのが基本になります(→コンペ・公募に応募するときの権利の話)。
また、名前の出し方(クレジット表示)も、譲渡・許諾とは別に決めておきたい項目です(→クレジット表示は権利? 名前の出し方)。
5. どう書き分けるか、迷ったら
「相手はこの絵をどこまで使うのか」を先に聞くと、譲渡と許諾のどちらが合うかが見えてきます。長期にわたり自由に展開したい相手には譲渡(27条・28条の扱いを含めて)を、用途が限られている相手には許諾を、というのが自然な整理になりやすいところです。
当事務所では、こうした契約書・覚書の作成やチェック、ご相談の範囲でお手伝いしています。契約の基本的な組み立ては、こちらでも整理しています(→クリエイター契約書の基本)。
よくある質問(FAQ)
Q. 「著作権はすべて譲渡します」と書けば、それで全部移りますか?
A. 翻案権等(27条)・二次的著作物の利用に関する権利(28条)は、特掲がないと譲渡人に留保されたと推定される、と整理されています。実務では、これらを含める趣旨なら明記されることが多いようです。
Q. 譲渡したあと、自分のポートフォリオに載せられますか?
A. 契約の内容によります。実績掲載を想定するなら、譲渡・許諾のどちらであっても、掲載の可否を契約書に書いておくと安心です。
Q. 買い切り・一括払いの依頼は、譲渡ということですか?
A. そうとは限りません。支払い方法と権利の移転は別の話です。実際に何が取り決められたかは、契約書の文言で判断されるのが一般的です。
Q. すでに結んだ契約の解釈でもめています。
A. 具体的な紛争・交渉・裁判の対応は弁護士の領域です。当事務所は書類作成・相談対応の範囲でサポートし、必要に応じて各専門家と連携します。
この記事は一般的な情報です
本記事は著作権の譲渡・利用許諾に関する一般的な情報提供であり、結論はケースによって異なります。契約書の作成やチェックでお困りのときは、具体的な状況にそってご相談ください。