自筆証書遺言書保管制度とは ― 法務局に遺言書を預けるしくみ
自宅で保管した手書きの遺言書は「見つからない」「書き換えられた」「無効になる形だった」といった心配がつきものです 2020年7月10日から、この手書きの遺言書(自筆証書遺言)を法務局で預かってもらえる制度が始まっています しくみと使い方を整理します
どんな制度か
民法968条(遺言の全文・日付・氏名を自分で手書きし、印を押すという決まり)の方式で書いた自筆証書遺言を、法務局(遺言書保管所)が預かり、原本と画像データで管理する制度です 根拠は「法務局における遺言書の保管等に関する法律」です 法務局は、遺言書が民法の定める方式に合っているかを外形的に確認したうえで保管するとされています
保管期間は、原本が遺言者の死亡の日から50年間、画像データなどの情報が150年間とされています
預けるメリット
- 紛失・改ざん・隠されるおそれが小さくなる(原本は法務局が保管します)
- 家庭裁判所の「検認」が不要 検認とは、遺言書を家庭裁判所に提出し、相続人の立会いのもとで遺言書の状態を確認・記録してもらう手続きです(遺言が有効かどうかを決める手続きではありません) 民法1004条1項(遺言書を保管している人や見つけた相続人は、遅滞なく家庭裁判所に提出して検認を受けなければならない、という規定)は、法務局に保管されている遺言書には適用されないと定められています(同法11条) そのため、検認を待たずに相続の手続きへ進めます
- 遺言者が亡くなったあと、相続人などは遺言書の内容を証明した書面(遺言書情報証明書)の交付を請求でき、これを使って手続きを進められます(同法9条)
- 一定の場合に、遺言書が保管されていることを相続人などへ知らせる通知の仕組みもあるとされています
申請のルール
- 遺言者本人が法務局に出向く必要があります 法律で「遺言書保管所に自ら出頭して行わなければならない」と定められています(同法4条6項)
- 遺言書は封をしない(無封)で、法務省令で定める様式(用紙の大きさや余白などの決まり)に従って作成したものに限られます(同法4条2項)
- 申請先は、遺言者の住所地・本籍地・所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局です(同法4条3項)
- 手続きは予約制とされています
手数料
| 手続き | 手数料 |
|---|---|
| 遺言書の保管の申請 | 1件につき3,900円 |
| 遺言書の閲覧(原本) | 1回につき1,700円 |
| 遺言書情報証明書の交付 | 1通につき1,400円 |
| 遺言書保管事実証明書の交付 | 1通につき800円 |
(法務局における遺言書の保管等に関する法律関係手数料令1条 モニターでの閲覧は1回1,400円)
気をつけたいこと
法務局が確認するのは形式です 遺言の内容が有効か、相続人の間で争いにならないか、遺留分に配慮できているかといった中身まで保証するものではありません 書き方に不安がある場合は、預ける前に文案を専門家と確認しておくと安心です
預けたあとで内容を変えたくなったときは、保管の申請をいつでも撤回できるとされています(同法8条) 新しい遺言書を書いて預け直す形になります
公正証書遺言とどちらを選ぶか
費用を抑えて手軽に残したいなら保管制度、内容の確実さを重視するなら公証人が関与する公正証書遺言、というのが一般的な整理です 違いは遺言書は「自筆」と「公正証書」どっちがいい?で詳しく比べています
よくある質問(FAQ)
Q. 家族が代わりに法務局へ預けに行けますか?
A. 法律で遺言者本人が出頭することが求められているため、代わりの人だけで申請することはできません(法務局における遺言書の保管等に関する法律4条6項) 付き添いについては事前に法務局へご確認ください
Q. 一度預けたら書き直せませんか?
A. 保管の申請はいつでも撤回できるとされています 撤回したうえで新しい遺言書を作成し、あらためて保管を申請する方法があります
Q. ワープロで作った遺言書も預けられますか?
A. 保管の対象は民法968条(手書きで作る遺言の決まり)による自筆証書遺言です 本文は自書が原則で、財産目録だけはパソコン作成や通帳の写しなども認められていますが、その各ページに署名押印が必要とされています 様式の細かな決まりは法務局の案内でご確認ください