遺言書は「自筆」と「公正証書」どっちがいい?基本の違い
遺言書には主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2つの方式があります。どちらが正しい・間違いということではなく、それぞれ作り方や保管の仕方、死後の手続きに違いがあります。この記事では基本の違いと、中間の選択肢である法務局保管制度もあわせて整理します。
遺言書には主に2つの方式がある
遺言書の方式にはいくつか種類がありますが、実際によく利用されているのは大きく分けて「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2つと整理されています。どちらも法律で定められた方式に沿って作成する必要があり、方式を満たしていないと、遺言書として認められない場合があります。
「どちらが優れているか」という単純な優劣ではなく、ご自身の状況(財産の内容、相続人との関係、緊急度、費用や手間にかけられる時間など)によって、向き・不向きが変わってくると考えるのが実務的な整理です。
自筆証書遺言とは
自筆証書遺言は、その名のとおり遺言者ご本人が自分で全文・日付・氏名を手書きし、押印して作成する方式です(財産目録については、一定の条件のもとパソコン作成や通帳コピーの添付などが認められる取り扱いもあります)。
特徴として、次のような点が一般的に挙げられます。
- 思い立ったときに、ご自身だけで作成に着手できる。
- 公証人や証人の関与が必須ではない(法務局保管制度を使わない自己保管の場合)。
- 方式の不備(日付の記載漏れ、押印忘れなど)により、無効と判断されるリスクがある。
- 自己保管の場合、亡くなった後の紛失・改ざん・発見されないリスクが指摘されている。
- 自己保管の自筆証書遺言は、相続開始後に家庭裁判所での「検認」という手続きが必要になるのが原則。
手軽に始められる一方で、方式面での不安や、死後の手続きの手間が残りやすい方式ともいえます。
公正証書遺言とは
公正証書遺言は、公証役場で公証人が関与して作成する方式です。遺言者が遺言の内容を口頭等で伝え、公証人がそれを文書としてまとめ、証人2名の立会いのもとで作成する、という流れが一般的です。
特徴として、次のような点が挙げられます。
- 公証人が関与するため、方式の不備による無効リスクが低いとされる。
- 原本が公証役場で保管されるため、紛失・改ざんのリスクが小さい。
- 相続開始後の家庭裁判所での検認が、原則として不要とされている。
- 証人の手配や公証役場とのやり取りが必要で、公証人手数料等の費用がかかる。
- 作成までに一定の準備期間や打ち合わせが必要になることが多い。
手間や費用はかかりますが、「確実に遺しておきたい」という場面で選ばれることが多い方式と整理されています。なお、具体的な手数料の金額は財産の内容等により異なりますので、本記事では触れません。詳しくは最寄りの公証役場や当事務所へご相談ください。
法務局保管制度という「中間の選択肢」
近年は、自筆証書遺言書保管制度という、法務局が自筆証書遺言の原本を保管してくれる制度も利用できるようになっています。自分で書く自筆証書遺言でありながら、保管を法務局に任せられる点で、いわば自筆証書遺言と公正証書遺言の中間的な選択肢と位置づけられることがあります。
一般的に指摘されている特徴としては、次のような点があります。
- 自分で作成する点は通常の自筆証書遺言と同様(内容面の不備までは保証されない点に注意)。
- 法務局に保管を申請する際、外形的な方式のチェックを受けられるとされる。
- 紛失・改ざんのリスクが下がり、相続人からの証明書請求などの仕組みも用意されている。
- この制度を利用した場合は、家庭裁判所での検認が原則不要とされている。
ただし、制度の詳細な要件・手続き(申請先の法務局、必要書類、保管の申請方法など)は、法務省・法務局の公式情報で最新の内容をご確認ください。
どちらを選ぶか迷ったときの考え方
一般的には、次のような視点で検討されることが多いとされています。あくまで一般論であり、最終的な判断はご自身の状況に合わせて行う必要があります。
- とにかく早く・気軽に意思を形に残しておきたい → 自筆証書遺言(または法務局保管制度)が選ばれやすい傾向。
- 相続人が多い、財産が複雑、相続人同士の関係に不安があるなど「確実性」を重視したい → 公正証書遺言が選ばれやすい傾向。
- 自分で書きたいが紛失・改ざんへの不安もある → 法務局保管制度が中間案として検討されることがある。
- 体調面などで急いで整えておきたい事情がある → 公証人による関与を含め、早めの専門家相談が勧められる。
どの方式にも一長一短があり、「これを選べば絶対に安心」という単純な答えはありません。財産の内容や相続人との関係を伺ったうえで、状況に合った方式とスケジュールをご提案することが可能です。