阪竹行政書士事務所
相続

おひとりさまの死後事務委任契約とは

公開 2026.08.11更新 2026.08.11 著者: 阪口智紀(行政書士)

「遺言書さえ書いておけば安心」と思われがちですが、実は葬儀や役所・契約先への連絡、住まいの片づけなどは遺言書ではカバーされません。単身の方の終活で近年注目されている「死後事務委任契約」について整理します。

遺言書がカバーする範囲、しない範囲

遺言書は、主に「誰にどの財産を残すか」という財産の分配を定めるための書類だと整理されています。一方で、亡くなった直後から必要になる実務——葬儀・納骨の手配、電気・ガス・水道や携帯電話・サブスクリプションの解約、住まいの明け渡しや遺品整理、飼っているペットの引き取り先の手配など——は、遺言書の効力の対象外とされています。これらは「誰かが実際に動いて片づける」必要がある事務であり、遺言書だけでは担い手が決まらないという課題があります。

死後事務委任契約とは何か

死後事務委任契約は、こうした死後の実務を、生前のうちに信頼できる相手(親族・友人・専門家など)へあらかじめ依頼しておく契約です。「葬儀は火葬のみでよい」「賃貸住まいの解約・退去手続きを任せる」「ペットの引取先を指定しておく」など、希望を具体的に盛り込むことができます。契約は公正証書の形にしておくと、受任者が対外的に説明しやすくなるため、選ばれることが多い方法とされています。

どんな方に向いているか

特に、身寄りが少ない方や、家族に負担をかけたくないと考える単身の方(いわゆる「おひとりさま」)にとって、有効な備えとされています。頼れる家族がいる場合でも、遠方に住んでいて即座に動けない、といった事情から契約を検討される方もいます。

遺言・任意後見との違い

制度効力が生じる時期主な役割
遺言書死後財産の分配を決める
任意後見契約生前(判断能力低下後)生存中の財産管理・身上保護を託す
死後事務委任契約死後葬儀・行政手続き・住まいの片づけ等の実務を託す

三つの制度は役割が異なるため、組み合わせて備えることで、生前から死後までの空白を減らせると考えられています。どの組み合わせが必要かはご事情により異なります。

契約を結ぶ際の一般的な流れ

  1. 依頼したい事務内容の洗い出し(葬儀・解約・遺品整理・ペット等)
  2. 受任者(依頼する相手)の選定
  3. 契約内容の具体化・文案の作成
  4. 公正証書化の要否の検討
  5. 遺言書・任意後見契約など他の備えとの整合確認

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